「小鳥遊さんって他人行儀に呼ぶのも何だなぁ~って思って。
’樹’くんって名前を呼んだ方がグッと距離が縮まるでしょう?」
私的にはナイスアイディアだと思うけれど、樹くんはぴたりと止めた足を一歩前へ出して
私を見下ろす。
きゃあ!やっぱりかっこいい…。
さっきまでのベッドで見せる彼の妖艶な姿も素敵だったけれど、こうやってジーっと見つめられると更に好きになっちゃう。
「君は一体…」
「君じゃないですぅ。私には、永瀬ひなたって言う名前があるんですぅ」
「’ひなた’だぁ…?」
眉をしかめてだが、私の名前を呼んでくれた。
初めてだよ!私の名前を呼んでくれたのは。それだけが胸がきゅんきゅんしてしまう。
低音で甘いキャラメルボイス。まさかその声で自分の名前を呼んでくれる日が来るなんて。
「はいッ。運命的にも樹くんの会社HINATAファウンダーと一緒なんです」
彼の事を調べているうちに知った彼の会社の一つ、その会社名と私の名前は偶然にも一緒なのだ。
だからなおさら運命めいた物を感じてしまう。
ううん、これはきっと運命に違いない。
「漢字は?…どういう字でひなたと読むんだ?」
お?少し興味持ってくれた。
ぐいっと身を出すと、サッと樹くんは身を退いた。
「平仮名でひなたですッ!」



