「ぷ、あはは、おま…はっきり言うなよ。お近づきになりたいとか、住んでる家が見れてラッキーとか。ぷぷ。それは笑うわ。
それはストーカーの発言だぞ、あはは。」
「えへへ、あはは。そうですッ私ストーカーですッ!」
「だからハッキリと言うなって。あはは」
おお。何だこの和やかな雰囲気は。
樹くんってこんなに楽しそうに笑う人だったんだ。
優しい人だというのにはとっくに気づいていた。 子供を大切にしている父親だという事も昨日知った。
けれどこんなに楽しそうに笑う樹くんは知らない。
ひとしきり笑い終えた後、穏やかな表情を見せた。
「どうお礼をすればいい?」
「それでしたらもう一度あの日の夜のような事を!ここは偶然にもベッドですし」
ぺシンと私のおでこをはたいて、彼は立ち上がった。
「冗談は顔だけにしてくれ」
半分本気だったのになー…。けれどこんな樹くんの笑顔を見ただけで私にとっては十分ご褒美なんだけれどなぁ。
あ、でもそれならば。
「それでしたら、私と一度デートをして頂けないでしょうか?!」
我ながらナイスアイディアだと思った。
必殺断れない状況に追い込むの巻。
「デートだぁ?」
ムッと口を結び、樹くんは顔をしかめる。 その反応は想定内でしたよ!
けれどこれで樹くんは私に一つ借りが出来た筈。断れないでしょー?断れない…よね?断っちゃ嫌だよー!
ああああ、調子に乗り過ぎてしまったか。樹くんは顎に手を持っていき何かを考えるように視線を落とした。



