しかし樹くんはフッと小さな笑みを落とす。 その笑顔に私は弱い。初めて会った時に見せてくれたような優しい笑顔に。
「でもどうやら嬉しかったらしい。 君の事は随分気に入ったように見える」
「そうですかぁー…?」
悪口しか言われてないじゃんかね。
「それに…昨日は助かった…。陽向はしっかりしている子だから家に一人で居ても平気なんだけれど…
やっぱりまだ7歳だから心配で…
だから昨日はどうもありがとう」
そう言って、樹くんは私の方へ頭をゆっくりと下げた。
「そんなそんな!私の方から預かるって言ったんですし!
それにゲーム楽しかったし…」
「アハハ、ゲームが楽しかったって。君は子供か…」
ずっきゅーん。
その無邪気な笑顔は反則だ。
何故か声を上げて楽しそうに笑った樹くんが、昨日無邪気に笑っていたチビひなたの笑顔と被る。
やっぱりこの人達は親子だ。
「どうお礼をしていいか…。家政婦料を払いたいんだが…」
「お金なんて頂けません…!私が勝手にした事です!
樹くんにお近づきになりたくって!それに樹くんの住んでいる家を見れてラッキーみたいな!」
喋り過ぎてしまう所は私の悪い癖だと思う。
けれど隣にいた樹くんはお腹を抱えて笑い出してしまった。 何がツボなのかは、いまいち分からないが。



