だから口の減らないガキだ。最近の子供ってこんなに生意気なんだろうか。そんな事を考えながら、じゃがいもの皮をピーラーで剥いていく。
それにしても、キッチンもごちゃごちゃしている。
シンクには洗っていないお皿が溜まっていて、広いキッチンの掃除は明らかに行き届いていない。
けれども立派な料理器具が揃っていて、カントリーちっくな食器も可愛い物ばかり。…きっと奥さんが居た頃に買い揃えられた物だろう。
ふと戸棚に入っていた夫婦茶碗に胸がズキズキと痛む。 その横にはチビひなたようであろう、可愛らしいクマさんの絵柄がついた食器たち。
「はーい、出来上がったよぉ。おかわりもあるからいっぱいお食べ~ッ」
「…いただきます。」
訝し気な顔をしていたけれど、よっぽどお腹が減っていたのかチビひなたは大慌てでカレーを食べ始めた。
スプーンを持つ小さな手。柔らかそうなほっぺたとサラサラの髪の毛。
大人しくしていれば、ただの可愛い子供なのに。 おーおー慌てて食べるもんだから米粒をほっぺたにつけて、そういう所はまだ子供だなぁ…。
そう思ったらくすりと笑みが零れ落ちた。
「美味しい?」
「カレーを不味く作れる奴がいるか」
「何よぉ。素直に美味しいって言えばいいのに。」
「デカひなたは食べないのか?」
「私…食べていいのかな…?」



