だーかーらーッ!
何でこんなに生意気なのよ?!
「女の人は皆お父さんが好きで僕に初めだけ優しくするんだ…」
けれど、そう言ったチビひなたの横顔はどこか悲しげだ。切ない気持ちで胸いっぱいになる。
確かに私は樹くんが好きだし、隙あらば彼の視線の中に入りたいと思っている馬鹿女に違いないけれど。
「馬鹿じゃないの?樹くんの事は確かに好きだけどチビひなたを一人にさせられないでしょう?
泣きそうな顔をしてたくせにッ!」
その言葉にグッとチビひなたは口を結んだ。
それ以上生意気な事を言う事は無かったけれど、ぎゅっと自分の気持ちを押し殺して
寂しいのに素直に寂しいと言えない。泣けない子供は見ていて切なくなる。それがたとえ樹くんの子供だとしても…。
タクシーが降ろした場所は閑静な住宅街で、立派な家が立ち並んでいた。
ここは所謂お金持ちしか住めない地域だ。そして白いお家はデカく新しく大層立派である。
ごくりと生唾を呑み込む。やっぱり樹くんって超お金持ちなんだ。噂には聞いていた。手広く事業を拡大していって、株や投資にまで手を出していると。
「おい、デカひなた何ボーっと突っ立ってんだよ。家の中に入れねぇぞ?」
「あーはいはい。入ります。それにしてもチビひなたの家ってでっかいねぇ。
ひぇ!玄関に住めそう!」



