「任せて…!」

樹くんはタクシーで仕事に向かって行ってしまった。

残されたのは、チビひなたと私。無理やりタクシーに押し込めると「いや、いや」とチビひなたは何度も言ったけれど、タクシーの運転手には、しっかりと自分の住所を告げていた。

ドロップの缶を渡すと、途端に静かになりカラカラと音を立てて飴を舐め始めた。

私はタクシー内でマーメイドに電話を掛けていた。よんどころない事情が入り、今日1日仕事をお休みさせて貰うためだ。

電話を切った早々チビひなたはこちらをキッと睨みつけた。

「おい、デカひなた」

「デカ、ひなた…?」

「お前の事だよ。デカいだろう?」

そう言ったチビひなたの視線はぱっくりと胸元の開いた私のワンピースの谷間にいっていた。

「誰かが言ってた。胸がデッカイ女はそこにばかり栄養がいって頭が空っぽなんだってさ」

誰がこのクソガキにそんな事を吹聴した?!

「そんな事よりお前、お父さんの事が好きなんだろう?」

ぎくりとした。
なんとまあ勘の鋭い可愛げのないガキだろう。
顔は樹くんそっくりなのだが…。

「お前みたいな女はお父さんの周りに沢山いる。 僕を利用して、お父さんに取り入ろうとする馬鹿女ばかりだ。
まあその中でもデカひなたはブスすぎてお父さんも絶対に好きになったりしないだろうけどな」