茫然とその場に立ち尽くす。ひなたと陽向。そして樹くん。

つーか同じ名前なんて更にややこしい…!大好きな人の子供と同じ名前って、それってどんな運命だよ?!

こんなの絶対に運命の無駄遣いだ。

言葉を失ってしまっている私に対して、樹くんの子供であるチビひなたは彼の手を強く引っ張る。

「ねぇ、お父さん早く帰ろうよ。僕お腹減ったよ」

「あ…ああ。おっと、ちょっと電話だ。陽向少し待っていてくれ」

樹くんが電話をしている間。チビひなたは彼の手を握り締めたままベーっとこちらへ舌を出してきた。

な、生意気~!顔はよくよく見れば樹くんそっくりだけど!

「え?!えぇ。
はい。今は会社の前で…急いで向かわせてもらいます」

電話で話している樹くんは偉く焦っている様子だった。そして電話を切ってから、チビひなたの目線にしゃがみこんで言い聞かせるように言った。

「ごめんな、陽向。お父さん今からちょっと大切な仕事が入ってしまったんだ」

「えぇー?!」

チビひなたは子供らしい悲しそうな顔を見せる。あの位の歳だ。親に甘えたいのは当たり前。…さっき言っていたお母さんが亡くなっているのならば、なおさらだ。