どんなにお洒落して着飾っても、並なのは変わらないけれど普通が1番って言うし、決して美人ではないけれど小動物っぽくて愛嬌のある顔は結構気に入っている。

用意を終わらせて、棚の上に飾ってあるおばあちゃんの写真を手に取る。

写真の中のおばあちゃんは、穏やかに微笑んでいる。
1年前に亡くなってしまったおばあちゃんが口癖のように言っていた。

’どんなに辛い事があっても笑顔を絶やさずに生きて行けば、絶対に善い事が起こる。

幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せなんだ’って。小さい頃からの言いつけを守り、どんな時でも笑顔を絶やさないように生きてきた。

めそめそしたり、しくしくネガティブになっているなんて私らしくないから。

「おばあちゃん、行ってきます。」

それだけ言い残し、アパートを出ていく。

秋の夜風が私は好きだ。数か月前までうだるような暑さが続いてたのが信じられない位、涼しい秋の匂いが鼻を通り過ぎていく。

八代台オフィスビルにやって来たはいいが、本日樹くんがオフィスで仕事をしているかは定かではない。

18時から19時の間に来なかったら諦めて、今日は仕事に行こう。そう考えながら、オフィス前のコンクリートの花壇に腰を降ろす。

『待っています。』

ここだけ切り取れば、本当にストーカーみたいだ。