大体18時から19時の間に仕事を終わらせる、若手社長にしては珍しい人なのだと言う。勿論彼本人が行かなくてはならない商談や接待などには夜からでも行っているのではないかと思うのだが。

謎に包まれた若手イケメン社長。小鳥遊樹をインターネットで調べているうちに目にした記事。

IT業界では中々に有名で、あれだけの容姿を持っていれば芸能人のようにサイトのゴシップ記事に取り上げられる。

そこには彼の女性関係の記事がつらつらと書かれていた。彼女は有名女優のT?!だとか。政界のトップの娘さんが実は婚約者?!など。


噂は信じない。
けれど先日彼が’待っている人が居る’と言ったのは、嘘ではないと思う。

あの時も、初めてベッドを共にした時もやけに慌てて帰ろうとしていた。 ’待っている人’は彼の大切な人で間違いないと思う。

それはそれでショックだが、はっきりと’彼女’とは明言していなかったから、彼の口からそれを聞くまでは、諦める理由には何ひとつなりやしない。

…もしかしたら大切な’犬’が待っているだけかもしれないし。


ベッドから飛び起きて、彼に会いに行く用意をする。

1Rの決して綺麗とは言えないアパートのクローゼットの中にある、お気に入りのピンクのワンピース。

それを姿見に合わせて、鏡に向かってにこりと微笑む。
セミロングの茶色の髪を丁寧に巻いて、出来るだけ大人っぽくメイクを施す。