「言葉をどう受け取るかは私の自由です!
取り合えず今日は電話番号だけでもゲットしなくちゃ私は帰りませんから!
お金1枚で私との間にあった事を清算させようなんて、悲しすぎますもんッ。
だからどうかどうか連絡先だけでも教えて下さい!」

両手を広げてその場で通せんぼ。 逃げてもどこまでも追いかけていくつもりだった。

だって私はまだあなたの一部しか知らない。あなたの事を沢山知りたいの。そして私の事も沢山知ってもらいたい。

恋はそうやって始まって、やがて愛になっていくものでしょう?

あなたが私を今好きじゃなくたって、未来は誰にも分からない。 でも私の第六感がこう言っているの「この人は運命の人だ」と。

呆れかえった樹くんはその場で黒い皮の手帳を取り出して、ボールペンで何かを書いていく。

そしてはらりと私の手の中にそれを落とした。まるであの日ハンカチを握らせてくれたように、彼の香りが秋の爽やかな風を舞っていく。

「俺のラインのIDだ。電話は余り好きではない。メッセージの方で勘弁して欲しい」

ぱあああっと顔が明るくなっていくのが自分でも分かった。
千切られた紙の中には、丁寧な字でラインのIDが書き記してあった。

「じゃ、俺はこれで」

さっと去って行こうとした彼の前を先回りする。

「何だよッ?!俺急いでるんだ。マジで」

「ちょっと待ってください。今急いでラインを送りますので。
これが違う人のIDだったら大変。」