電灯に照らされた彼の美しい横顔は少しお疲れ気味だったけれど、遠くから眺めていても超かっこいい。
後ろから追いかけてスーツの裾を掴むと、彼はバッと後ろを振り返って目を丸くした。
「君は…」
「お疲れ様ですッ!
こんな時間まで大変ですね?!」
ぎょっとした表情を見せて、樹くんは一歩…また一歩後ろへ下がって行く。
その間も目を凝らし私の顔をジーと見つめ、そして思い出したかのように声を上げた。
「永瀬ひなた…!」
「嬉しい!名前を覚えていてくれたんですね!」
顔を引きつらせたままぐいぐいと近寄って行く私から離れるように距離を置く。
こういった反応は、想定内だ。寧ろ名前をフルネームで覚えてくれていたのが、嬉しい誤算なのだから。
「覚えていた訳ではない。余りに印象が強すぎて忘れられなかっただけだ…」
「キャッ。私が樹くんの私の事をずっと忘れられなかったなんて
私も同じ気持ちですッ」
「そんな事はひっとことも言ってないんだが?
どうして君の脳内はそうやって話が都合よく変換されるんだ…?
そして何故…君がここに…」
「はい!待ち伏せをしていました!」
正直にそう言うと、樹くんはその場でぶっ倒れそうになった。
あら…意外。お茶目な面もある人なんだ。
「この間は突然告白なんて不躾な事をしてしまい申し訳なく思っています。
やっぱり樹くんの言う通り…お付き合いって言うのは互いをよく知ってからじゃないから駄目だなぁーと思いまして。」



