【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー


「小鳥遊樹は六本木界隈でも良い噂は聞かない」
「何でも女遊びが激しいって話」
「来るもの拒まず去る物追わずだけど、誰にも本気になったりしないって」
「あいつに泣かされた女の子、両手じゃ収まらないくらいだよ?!」

けれど恋は落ちてしまったら最後。 私にとって樹くんの周りの評判など関係はない。あの夜を経て、私はもっともっと樹くんを好きになってしまったんだから。

数日後。
お昼の清掃終了後のオフィスビル。

今日は夜のバイトは入っていない。 そして昼間におばちゃん情報で樹くんがビル内のオフィスに入って行く情報をキャッチ。

時刻は19時を回る時。もう2時間はここで待ち続けている。彼に会うためならば、何時間でも待てる自信がある。

かおるちゃんいわくそれは「ストーカー行為」らしい。


携帯を開き、先日彼と撮ったツーショット画像を見てニヤニヤと笑う。

これはさっそく待ち受け画面にした。出来る事ならば、笑顔いっぱいの彼を待ち受けにしたいものだが、今の所はこれで我慢をしておく事にする。

19時半。
既に外は真っ暗になっていた。 オフィスビルの前にある花壇の石段に腰を降ろして足をぷらぷらさせていると、中から出てくる黒いシルエットが眼に入って立ち上がる。

シルエットで彼だと分かってしまうなんて、私は本当にストーカー気質があるのかもしれない。