「君が居なくなった方が陽向は傷つくし、泣くぞ?
またぴゃーって泣きだしてしまう。 良かった、君の好きな人が陽向で…。俺はてっきりまた見ず知らずの男に君を取られるかと思った」
「ちょっと…樹くんおろして…チビひなたが戻って来ちゃう」
「嫌だね、もう離さないと決めた。俺より先に死なないと君は約束をしてくれた。
それを生涯かけて守ってくれ…」
「樹くん……」
私をお姫様抱っこする彼は、まるで子供のような顔をして顔をくっつけて甘える。
そんな我儘ばかり言って。これじゃあチビひなたとどっちが子供か分からないよ。
「おい、何やってるんだ」
高音のソプラノ音が鳴り響いたかと思えば、お風呂上がりのチビひなたが私達を見上げている。
それはそれは不服そうにこちらを睨んでいる。
「ちょ、樹くんおろしてってばぁー」
その問いかけは虚しく宙に消えた。
その代わり私を抱きかかえたまま、樹くんがチビひなたに言った。
「陽向、お父さん本気でデカひなたが好きなんだ。だから一緒に暮らそうと思う。三人で
それを陽向にもどうか許して欲しい」
「離せよぉ」
樹くんの言葉を無視して、チビひなたは背伸びして彼の服の裾を引っ張った。



