「私の事を…好き?」
「君は素直で明るいから人に好かれるのは分かる。
まさか自分の息子と好きな人が被るとは、夢にも思わなかったがな」
その日食べた味噌ラーメンはいつもよりしょっぱかった。本当に塩ラーメンになってしまったのではないかと思う程。
切ない恋の味がした。
樹くんの言う事が本当だとしたら…。
チビひなたは私を嫌いになった訳ではないと言うのならば。 もう一度会いたい。一度と言わずに、あの子が大人になっていく季節を樹くんと一緒に見守っていけたら。
お母さんには到底なれないから、そんな大それた事は願わないから。
大好きな屈託のない笑顔を、どうかもう一度私へ投げかけてくれないだろうか?
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「どうしてお前がここに居る?」
最近小鳥遊家へ余り行って居ない事はジョージさんにはバレバレだった。
マーメイドのバイトが無い日は、忙しい樹くんの代わりに家に行っていたが、そういう訳にも行かなくなり、以前通り樹くんがどうしても外せない仕事が夜に入るとジョージさんが家に行っているようだった。
ジョージさんも樹くんと同じ事を言っていた。 陽向は、ひなたちゃんが好きみたいなんだ、と。



