(まるで夢みたい!)

時刻は午後21時を回ったばかりだった。
現在私 永瀬(ナガセ) ひなたは生まれて初めてのスイートルームに居る。

目を見張るほど豪華な都心のスイートルーム。寝室にリビングルーム。応接間など他の部屋が一対になっている客室。

ベッドルームをぐるりと囲み込むようにある大きな窓からは、都心の夜景が一望出来る。様々な色の宝石が散りばめられたような美しいこの光景をこの目で見る事が出来る日が来るなんて…。

思わず自分のほっぺたをつねる。 夢ではない。

しかしこの豪華なスイートルームと美しい夜景よりももっともっと夢の様な出来事は、今から1時間ほど前へと遡る。

私の隣で眠る、美しい寝顔と引き締まった体。

私…本当にこの人に抱かれたんだ。寧ろそっちの方が夢みたい。ずっとずっと憧れていた彼とのさっきまでの情事を思い出し、ニヤニヤが止まらない。

この手が私を抱きしめて、その薄い唇にキスをされて、彼の大きく情熱的な瞳が私を捉えて離さなかった。

しかも身体の相性はぴったりだった。こんなのもう運命としか言えないよ…!
何時間でも眺めていられるその美しいお顔を見つめ、えいっとほっぺをつっついて見る。
うん…と小さな唸り声を上げて彼はそっぽを向いてしまった。

あ、そうだ。せっかくだから寝顔を写メで撮っちゃおう。こんな綺麗な寝顔に早々出会えないだろうし。

真っ裸のままベッドから起き上がり、そっぽを向いた方にぐるりと回り携帯のカメラを構える。…傍から見たらなんて不気味な光景だろうか。