「ただいま、休憩から戻りましたぁーッ!」

「お。ひなたちゃん元気いいねぇーッ」

「ジョージさんーッ。シフト重なるの久しぶりッ!
元気してたぁ?腰の方は大丈夫?」

「数日休んでごめんなぁ。全く歳には勝てないって奴だなぁーッ」

「まだまだ若いよぉッ。あ、それ重いでしょう?貸して貸して私が持つから!」

永瀬 ひなた。今年で23歳。夢は幸せな家庭を作る事。超平凡かもしれないけれど、小さい頃からの私の変わらない夢だ。

そして1年前東京に上京したばかりの私はフリーターをしていて、昼間は八代台タワービルの清掃員としてアルバイトをしている。夜はマーメイドでウェイトレスをしているから掛け持ちって訳だ。


特にしたい事がなかった上京。かおるちゃんみたいに芸能人になりたいって大きな夢も野望もなくって、様々なバイトをしてきたけれどドジをして失敗ばかり。

首になった職場は数か所。そして辿り着いたのがこの八代台タワービルの清掃の仕事だった。

数々の有名オフィスが入っている目を見張るほど大きなタワービル。ここは東京のど真ん中。そしてビジネスの中心街である。


青色の全く色気のない作業着を着て、毎日この大きなビルを走り回っている。

綺麗な仕事ではないかもしれないけれど、パートのおばちゃんや会社を定年退職したおじちゃん達と働くのは、私にとって全く苦痛ではない。おばあちゃんっ子だったからだろうか。