膵臓癌で余命1年。肝臓にも転移している、と告げられた。 淡々と説明をする医師の前で、俺の頭は真っ白になっていって

向日葵の笑顔だけが頭の中で揺れていた。あの日聞いた説明は余り覚えていない。

こんなに呆気なく余命宣告はされてしまうものか、とどこか他人事だった程実感がなかったのだ。


後に胃の転移も疑われていて大腸検査もする事になった。

きちんと向日葵の事を見ていなかった。 思えば、病室で眠る向日葵の腕がガリガリに痩せている事にやっと気づいた。

それ位俺は向日葵ときちんと向き合ってこなかったのだ。


――「あなたごめんなさい、こんな事になって…
あなたは仕事で忙しいのに、家の事も出来なくって…」


気が付けば口癖になっていた’ごめんなさい’それを言わせていたのは俺だと向日葵が病気になって初めて気が付いた。

けれど向日葵は俺への文句や不満をぶつけるでもなく、いつだって優しく微笑んでくれた。 いつだって側に居てくれた温もりに、気が付くのが遅すぎた。

そしてその時俺は初めて自分の愚かさに気が付いたのだ。