俺は向日葵の良い旦那でもなかったし、陽向にとっても良い父親ではなかったと思う。

あの頃は仕事に夢中で、会社を大きくしていく事ばかり考えていて大切な物を見失っていた。
今でも後悔している。

――「ごめんなさい。今日ちょっと病院に行こうと思うので、陽向の事はお義父さんに頼む事にしました」

「具合いが?大丈夫なのか?」

「最近胃の方に痛みがあって…。痛み止めで何とかやり過ごしてきたんだけど、きちんと病院で薬貰ってくるわ。
大した事はないと思うから、大丈夫。」

大丈夫。あの日の君もそう笑っていた。
それは丁度夏で、庭に植えていた向日葵が太陽に向かってゆらゆらと揺れていた。

胃が痛い、と言っていたから胃潰瘍かストレスからくる何かだとは思っていた。まさかあんな大事になるとは想像もしていなかったんだ。


病院に行ったその日に検査をして膵臓に腫瘍があるのが分かり、緊急入院になった。

胃が痛いと言っていたので、何故膵臓に?といささか疑問だったが、こういった事はよくある話らしい。

2日後、検査結果が出た。
何故か俺だけが主治医に呼ばれ話を聞く事になった。 不安は少しずつ募って行った。