かおるちゃんの悲痛の叫びがカフェ内に響いていた。
けれども私はお会計を済ませてカフェを後にする。
カフェを出たら、柔らかい秋の風が通り抜けていく。 やっぱりこんな日はスキップをして歩きたくなってしまう。
つい先日までこの猛暑のお陰で完全に夏バテをしていた。全てを焼き尽くすような日差しの下で、毎日汗だくになって走り回る毎日。
けれど最近はラッキーな事ばかりで、気持ちはハッピーでどこまでも突き抜けていく青空にまで手が届いてしまいそう。
先程も述べた通り、私と樹くんを繋げてくれたのはかおるちゃんとかおるちゃんのお客様の都内で美容系の会社を何店舗も営む前坂社長だ。
そして出会った場所は、クラブマーメイド。クラブマーメイドは六本木にある会員制のクラブだ。
そこで働く女の子たちはかおるちゃんの様な芸能界を志すタレントの卵だったり、有名大学の美人学生だったり、新宿で何年もナンバー1として君臨した有名キャバ嬢だったりする。
つまりは、敷居は高い。
私如きのレベルの女では、絶対にキャストとして雇っては貰えない。
と、いう事で私はマーメイドでウェイトレスとしてお客様を席へ案内したり、ドリンクを作ったり片づけをしたりするバイトをしている。
そしてここでバイトをし始めた理由は、勿論小鳥遊樹。彼に出会う為である。安易な理由だったとは思う。けれどばっちり出会えてしまう所が、この街の狭さを物語っているとも思う。



