あれから1か月。
秋がぐっと深まり、もう夏の気配さえ感じられない。
ぼろっちいアパートから吹きすさぶ風は冷たい。

昼に八代台オフィスビルで清掃の仕事をして、夜はマーメイドで週数回アルバイト。
私の日常は変わらない。変わらないように見えて変わった事が一つある。

「おい 一緒に宿題やろう。教えてやる」

「お、教えてやるって」

「小学校2年生の問題さえお前には分からないだろう。僕が教えてやる。お前を立派な大人にする為に」

「なッ!小学生の問題位分かるわよッ。馬鹿にしないでよ」

週3回マーメイドでアルバイトが入っている。だからそれ以外の日に小鳥遊家へ来るのは何故か日課になった。

チビひなたがご所望らしい。 樹くんに申し訳なさげに頼まれたが、私は天に昇るほど嬉しかった。 ので、週4回私が小鳥遊家に夜来る日は樹くんも仕事に没頭出来る訳である。

好きな人の役に立てている!こんな私でも…!


そしてチビひなたと一緒の時間は思いの外楽しかった。
相変わらずちっとも料理は上手くならない。 料理本片手に、見た目の不細工な料理。

宿題をして一緒に遊んで、お風呂にはいっつも一緒に入りたいと言われる。 お風呂の中で私にぎゅっと抱き着くチビひなたは天使のように笑う。

私はこの頃には恋に似た愛しさをこの子に感じるようになっていた。