「ちょっと!!!その続きは?!」

「うるさいな。君は少し騒々しすぎる。」

「ちょっと待ってくださいよ!このまま帰るなんて、胸がドキドキして眠れません!
続きを!!!」

「うるさいっ」

そう言って、運転席から身を乗り出した樹くんは私の唇へキスを落とした。
直ぐにパッと唇を離したかと思えば、再びエンジンをかけて車を走らせる。

胸が爆発してしまいそうだった。 私達は、身体を重ねた事がある仲。あの時も今よりもっとすごい事をして、ドキドキしてときめいたけれど

キスだけでこんなに倒れそうな位心臓がドキドキするなんて。

「君と一緒に居ると、楽しい。
君と陽向が一緒に居る姿を見ると、嬉しくなる。
俺だけが…こんな気持ちになって本当にいいのだろうか…?」

シンとした社内でエンジン音だけが騒がしく聴こえる。
熱の残った唇を押さえて、これは夢?とほっぺたをぎゅっとつねる。

夢じゃない。

二人の距離が近づくたびに、こんなに嬉しくなって樹くんを好きになって行くのに。それと同時にチビひなたへの愛しさも募るばかり。

こんな気持ちに本当になっていいのだろうか? だけど樹くんの言葉がぎゅっと胸を締め付ける。

チビひなたのお父さんとしてだけ生きて行くと決めた樹くん。
向日葵さんを忘れないためにもう誰とも付き合わないと決めた樹くん。

それを聞いてしまった。だからその狭間で揺れ動くこの恋心は、とても切ない。