ブレーキを掛けて、樹くんは車を停めた。そしてフッと小さく笑いこちらを見やる。

「そう思えるデカひなたの方が優しい」

優しい顔でそんな優しい事を言われたらついつい照れちゃう。
デカひなたってあだ名も愛しく思っちゃうんだから。やっぱり樹くんはずるい人だよ。

「陽向が動物園でこっそり俺に言っていた。
君はレッサーパンダに似ていると」

「れ、レッサーパンダ?!」

そういえば、人気の動物の一つだ。

「間抜けな顔をして同じ木をうろうろと歩いている挙動不審な動物だ、と」

おいっ。思わず寝ているチビひなたに突っ込みたくなった。

「この動物園で1番可愛いとも言っていた。」

それって、それって、私を可愛いと言っているのと同じじゃないか。
その言葉を聞いて思わず胸がときめいてしまう。 7歳にしてそんな言葉が言えるとは。

「あはは~、光栄ですッ。あんな可愛くはないですけどね!」

樹くんは何故か、ハンドルに顔を埋め視線だけちらりとこちらへ向けた。
それはさっき昼間に見た照れている時の顔と同じで。

「俺も…俺もそう思う」

「そ、それってどういう意味?!」

「陽向は君の事がどうやら好きなようだ。
そして親子揃って女性の好みが似るって言うのはガチだな…」

少しだけ悔しそうな顔。けれども顔を赤らめてそうはっきりと言った。

「そそそそそれは!!!」

「今日は帰る。
家まで送って行く」