「それってやり逃げじゃん。またの名をやり捨て。
どっちも一緒か」

「本当にかっこよかったんだよねぇ~…。それにすっごく上手だったし」

「聞いてねぇよ。しっかし噂通りサイテーな奴だな、小鳥遊樹」

「本当にあんなロマンチックな夜は生まれて初めてだったよ。
幸せってああいうのを言うんだって改めて感じた!今までの恋愛は樹くんに会う為の練習試合だったようなもんだよ!」

「つーか、あんた人の話全く聞いてないでしょうッ?!」

「…何でそんなに怖い顔して怒っちゃってるの?かおるちゃん…」

「たくッもー…あんたと話してりゃー誰だってこうなってしまうわよ…」

季節は夏から秋に変わる所。アスファルトをじりじりと焼き尽くす太陽の熱が、ぽかぽか陽気に変わって行って過ごしやすい季節になってきた。

秋は美しい。基本的に食欲の秋の私だが、昨日ニュースで見た。紅葉に染まって行く秋模様の山々。

もみじの帳が広がって行って、テレビ画面越しだったが秋の存在を感じる事が出来た。 食欲の秋ばかりの私が、景色を見て美しいと思ってしまうのは、それは恋をしているからだと思う。

「はっきりと言っておくけど、小鳥遊樹なんて止めておいた方がいいわよ。
ひなたには全く似合ってないし、大体お金を置いて忘れてくれなんて失礼すぎるッ…
次の男に行くべきッ」

「でさー、かおるちゃん、私樹くんの会社に行こうかと思ってるんだけどー…」

「あんた…絶対人の話聞いてないでしょう…?」