ニコッと笑顔を向けると、樹くんも下手糞な笑顔を浮かべる。

「君を子供だ、と言っていたけれど本当に子供だったのは俺の方かもしれないな。
向日葵が居なくなって辛すぎて、何人もの女性を抱いて来た。心が満たされる訳でもないし、この世に向日葵の代わりなんていないって分かりながら
寂しくて寂しくて仕方がなかった。俺は、君や陽向よりずっと子供なんだ…」

背を落とす彼の背中を数回ぽんぽんっと叩いた。チビひなたをあやすように。
この人の大きな背中が頼りなく見えて、まるでチビひなたのように見えてしまったから。

「てゆーか、私そろそろ帰らなきゃ。終電逃しちゃうし、あのー、私の家って何線乗ったら帰れるか分かりますか?
この辺の地理がまだよく分かっていなくって」

「泊っていけばいい。その為にパジャマを用意したんだ。
どうやらブカブカのようだが」

意外なお言葉に、天に召されるような幸せでいっぱいな気持ちになる。
樹くんの少し酔っぱらったトロンとした視線が私のパジャマ、胸元に落ちる。

「確かに大きいです。でも自慢の胸はぴったりです」

胸を張ると、馬鹿かと一蹴されてしまう。 そんな所も好きだけどね。
「でも本当にいいんですか…?泊っていっちゃって」

「構わない。起きて君が居れば陽向も嬉しいだろう」

「でも子供の前でしちゃっていいんでしょうか?」

「何がだ?」

「エッチを」

ズコッとソファーから樹くんは見事にひっくり返る。
おお、そのリアクション一流お笑い芸人並ですな!