この夜景の光りの数だけ、人々のドラマがある。
すれ違いばかりの世界で、あなたに出会えただけでも奇跡と呼べる。

そしてあなたとこのスイートルームで愛し合ったのは、私にとっては夢にまで見た夢のような出来事。

ここで諦められるものか。これっきりにしてたまるものか。ここまで来たんだ。勇気を持って進まなくては。

「よーし!小鳥遊 樹!あなたの心を盗みに行くぞー!

あぁー!電話番号聞くの忘れちゃったー!」

ちゃっかりした自分の、抜けている所。
折角ここまでこぎつけたのに間抜けすぎる。
けれど、私には自信があった。

きっとまた会える。いや、会いに行くのだ。どんな手を使ってももう一度あなたの瞳に映って見せる。

生きてさえいればどんな人間にもチャンスの女神は微笑んでくれる。

携帯のフォルダーを開いて、先程のツーショット写真を見てにやける。…あぁ、なんて格好いいんだろう。大きく印象的な瞳に小さく通った鼻。唇は薄くて少し薄情そうだけど、とても柔らかかった。

そしてスマイルラインがとても美しい彼が笑うと、とても甘い事を知っている。

あなたの心を絶対に手にして見せる!
この恋を一夜の過ちで終わらせたりなんかしない――。