あの日は,綺麗な星空だった。
月が俺たちの顔を,淡く照らしていた。

『フェン様〜!』

後ろで大声が聞こえたかと思うと,俺の隣にあいつがいる。

今のところ,“あいつ”が俺の人生の全てだ。

あいつは弾けたように笑い,

『泣いてるの?』

少し悲しげにそう言った。

『お前の目は節穴か!
これの何処が泣いている!?』

こいつは時々訳の分からないことを言う。

俺は怒った口調で言い返したが,彼女はもっと怒ったように

『泣いているわよ!!
フェン様は出会った時からずっと泣いてる!』

そう言い放った。

意味がわからない…

当時の俺はそう思っていた。

でも,今考えてみると,こいつの言うことは少しは当たっていたのかもしれない。

もう,というようにふわりと笑った彼女は恥ずかしがりもせずに言った。

『私,フェン様のことが好きよ!』

『あぁ…俺も,だ。』