君に恋した僕の話

橙色に染った空。
夕日が輝いている中僕は中井と2人学校の坂道を下っている。
僕から話しかけなきゃなと思っていた時
「沢田くん」
彼女は僕の名前を呼んだ。
「ん？どした」
「沢田くんはどんな女の子がタイプ？｣
その質問には正直驚いた。
というのも中井とはまだ恋愛的な話はしたこと無かったからだ。
少し緊張しながらも、、、
「優しくて、ほ、包容力がある人かな？｣
自分のバカ！こんなのテンプレ通りじゃないか！
「沢田くんそれテンプレだよ！｣
彼女はお腹をかかえて笑ってきた。
「じゃあ中井はどんな人がタイプ？」
自然な流れで聞くことが出来た。
「真っ直ぐ前を向いている人かな」
僕にはその言葉の意味が理解できなかった。
「前を向いている人って？」
「どんな事にも真っ直ぐで全力で一緒に辛いことも乗り越えていきたいって本気で思える人｣
そう語る中井のキラキラした横顔。
「母さんそっくりだ｣
「おかあさん？」
「生きてた頃母さんは介護福祉士をしててさ、仕事の事で大変だっただろうけど、いつも誰かのためになるならどんな事でも頑張れるって言ってた。その頃の母さんのキラキラした横顔によく似てる。」
「そっかぁ、私もそんな大人になりたいな」
この雰囲気、今しかない
「中井！｣
「え、あ、はい！」
いきなり名前を読んだせいか声が上ずっていた。
「えっと、あの、」
うまく言葉が出せない。
「沢田、くん？」
「いつも元気で、めちゃくちゃ辛い時も励ましてくれて、一緒にいてくれる中井のことが、、！」
「好きだよ」
そう言葉にしたのは中井の方だった。
「どんな事にも真っ直ぐで全力で一緒に辛いことも乗り越えていきたいって本気で思える人。それって私の中だったら沢田君しかいない。私がいじめられていた時助けに来てくれたから！」
「もしかして」
もしかしてあの時、僕が助けた女の子は
「あの時は助けてくれてありがとう」
涙が彼女の頬を伝っていく。
あの時は泣きながら走り去ってしまって顔を見ることが出来なかった。
しかし今流してる涙はあの時の涙とは全く違うことだけは僕にも理解出来た。
「ずっと一緒だからね」
中井の小指に自分の小指を重ねる。
「あと！二人でいる時は美春って呼んで！私は智って呼ぶから！」
「わかった、み、みはる、、」
と彼女の名前を呼んでみる。
「顔真っ赤だよ」
不本意にも緊張が顔に出てしまっていたようだ。
彼女は僕を見るといつものように笑ってきた。
「う、うるさい！」
この日から僕と中井の関係は変わった。