そして次の日の朝。
母さんがうちに運ばれてきた。
そして親戚に見守られながら納棺され、葬儀場に送られた。
この日はお通夜があり、翌日家族だけで葬儀を執り行われた。
「母さん、いままでありがとう。ほんとにありがとう。」
僕は葬儀の終わりに母さんにきちんとお別れを伝えることが出来た。
この時、母さんから小さい頃よく言われた事をふと思い出した。
「何かをしてもらったらありがとうをちゃんと言いなさい。何かをしてしまったらごめんなさいをちゃんと言いなさい。好きな人が出来たら好きだとちゃんと伝えなさい。後悔したって取り返しのつかない事だってあるんだから。ただ、後悔のしないように生きなさい。」
今その言葉が胸に刺さった。
後悔しないように。
僕はこの時決めた、中井に告白しようと。
次の日、僕はいつも通り登校した。
そして、校門に中井の姿を見つけ、話しかけようと思った。
思ったのに、何故か上手く声が出ない。
結果的に中井が僕に気づいて話しかけてくれた。
中井の事が好き。
告白すると決めてから僕は上手く中井と話せなくなった。
昼休みも変に意識するせいか、恥ずかしくて目が合わせられない。
「何意識してんだよ｣
自分にはそう言い聞かせてるのに。
もちろん話しかけることなんて出来ない。
中井が話しかけてくれても、すぐ会話が終わってしまう。
そして時刻はいつのまにか下校時間に迫っていた。
今日1日は中井とほとんど喋れずじまいた。
下駄箱で落胆している僕の背中を誰かが叩いてきた。
振り返るとそこには中井がいた。
「今から帰る？」
僕の顔を覗き込むように聞いてきた。
「うん、帰るよ」
と答えると
「一緒に帰る！」
と彼女は嬉しそうに言ってきた。
「今日父さんいるけどいい？」
「うん！」
「じゃあ、帰ろう」
この帰りこそ、彼女の事を沢山聞こう。
僕はそう決めた。