手を握った。
やがて行列は散らばり、人混みもまばらになった。
僕は彼女と近くのベンチに座った。
そこでやっと彼女の手を握り続けていた事に気づき、慌てて手を離した。
「ごめん!とっさのことだったから」
「ううん、ありがと」
彼女は少し顔を赤くした。
「顔、赤いけど」
「うるさい」
「え、ごめん」
「男の子に手を握られるなんて初めてだよ」
「ほんとごめん!」
もう一度改めて謝った。
「沢田君なら、良いよ、、」
彼女の声はすごく小さくて何を言ったか分からなかった。
「え?」
と聞き返すと、
「もう!行くよ!」
彼女は少し怒ったようにそう言った。
僕はそんな彼女の背中を追った。
まずは彼女の洋服探しに洋服店へ立ち寄った。
人生で1度も女性物の洋服店など入ったことがなくて少し緊張してしまっている自分がいた。
彼女は秋物のニット生地のセーターを手に取ると
「どうかな?」
と言ってきた。
すごく似合いそうだ。
「試着してみれば?」
僕は彼女に試着を勧めると彼女は近くにあった茶色のロングスカートも手に取り、試着室のカーテンを開いた。
「覗かないでよ」
入る前に念を押すように言われた。
「覗かねーよ!」
そう言うと彼女はカーテンを閉めた。
微かに衣擦れの音が聞こえる。
少し意識してしまう。
意識を別の所へ持っていく努力をしたものの男子として意識せずにはいられなかった。
自分でも情けないと思う。
そんな事を考えてるうちに彼女は試着室から出てきた。
「どうかな?」
出てきた彼女の姿は控えめに言っても綺麗だった。
秋らしい色合いのスカートとセーターが彼女を大人な女性へと変化させていた。
「うん!いいと思う」
そう言うと彼女は嬉しそうに
「これにする!」
と言い、試着室へ戻って行った。
会計を済ませ、次に向かったのは雑貨屋。
彼女は店に入ってすぐのライオンのぬいぐるみを手に取った。
「これめっちゃ可愛い!」
と、彼女がこっちを向いた時だった。
僕のスマホに着信が入った。
父さんからだ。
「あ、ごめん」
僕は電話に出た。
「智!お母さんの容態が急に悪くなった!病院まで来れるか!?」
「...え?」
頭が真っ白になった。
そして気づいた頃には走り出していた。
ちょうど京都駅行きのバスがあったので乗り込んだ。
車内で中井に「ごめん、母さんの病院に行かなくちゃいけないんだ」とメッセージを送った。
そしてバスは京都駅に到着する。
駅につけば病院はすぐそこだ。
病院に着くと母さんの病室まで全力で走った。
そして
「母さん!!」
着いた頃には父さんがベットの側で泣き崩れていた。
そこにいたお医者さんは
「お母さまはお亡くなりになりました。」
と、俯きながら言った。
僕は現実が受け入れられなかった。
「うそ、だろ」
母さんのベットの側まで行き手を握った。
顔は既に青ざめていたが手にはかすかに体温を感じた。
「母さん、母さん!」
いくら声をかけても返事は返ってこなかった。
「母さんにお葬式までにはちゃんとお別れ言ってやれよ」
父さんは優しく僕と母さんを抱きしめてくれた。
「今日はもう家に帰りなさい。父さんはこれからやる事が沢山あるから今日は家に帰るのが遅くなると思う。ごめんな。」
僕は病院を後にし、帰宅した。
スマホを開くと中井からメッセージが届いていた。
「どうしたの?」
僕は母さんが亡くなったとメッセージを送った。
そしてそのままソファで眠りについた。
ピンポーン
インターホンの音で目が覚めたのは夕方の6時頃だった。
「誰だろ」
インターホンの画面に映っていたのは中井だった。
僕は玄関を開けた。
「ご飯作ってあげる」
「いいよ、今日は自分で作るから」
「そんな事言わなーい」
彼女が僕の家に入ると買い物袋を台所に置いて早速料理を始めた。
今日のメニューはカレーだ。
僕も野菜を洗ったり切ったり、手伝いをした。
その時僕はふと思い出した。
「小さい頃母さんとよく一緒にカレー作ってたっけ」
そんな母さんはもういない。
母さんの死が現実味を増してきた。
僕はまた涙を流してしまった。
そんな僕を見た彼女は優しく頭を撫でてくれた。
男として本当に情けない。
カレーが完成したので、食卓に並べた。
「いただきます」
1口カレーを口にした瞬間、母さんの味と同じだと気づいた。
「これ、母さんの味だ」
「気がついた?さっき台所の棚を探してた時に、このレシピ本見つけたんだ」
そう言って彼女が見せてきたのは母さんの手書きのレシピ本だった。
そこにはたくさんのレパートリーの料理のレシピが載っていた。
母さんの料理は僕にとって故郷の味。
忘れられない味。
「このレシピ本、中井にあげる」
「え?けどこれ大切なレシピ本でしょ...」
「大切なレシピ本だからこそ中井に持っていて欲しいんだ」
「...ありがと」
僕は彼女にレシピ本を渡した。
受け取った彼女の頬は赤らんでいた。
カレーを食べ終わり、後片付けをした。
「いつもありがと、あとごめん。今日何も言わず帰っちゃって」
「いいの、事情が事情だし。またもう1回行こ!」
「ありがと」
そして彼女は帰っていった。
僕は風呂に入ってこの日は寝ることにした。
やがて行列は散らばり、人混みもまばらになった。
僕は彼女と近くのベンチに座った。
そこでやっと彼女の手を握り続けていた事に気づき、慌てて手を離した。
「ごめん!とっさのことだったから」
「ううん、ありがと」
彼女は少し顔を赤くした。
「顔、赤いけど」
「うるさい」
「え、ごめん」
「男の子に手を握られるなんて初めてだよ」
「ほんとごめん!」
もう一度改めて謝った。
「沢田君なら、良いよ、、」
彼女の声はすごく小さくて何を言ったか分からなかった。
「え?」
と聞き返すと、
「もう!行くよ!」
彼女は少し怒ったようにそう言った。
僕はそんな彼女の背中を追った。
まずは彼女の洋服探しに洋服店へ立ち寄った。
人生で1度も女性物の洋服店など入ったことがなくて少し緊張してしまっている自分がいた。
彼女は秋物のニット生地のセーターを手に取ると
「どうかな?」
と言ってきた。
すごく似合いそうだ。
「試着してみれば?」
僕は彼女に試着を勧めると彼女は近くにあった茶色のロングスカートも手に取り、試着室のカーテンを開いた。
「覗かないでよ」
入る前に念を押すように言われた。
「覗かねーよ!」
そう言うと彼女はカーテンを閉めた。
微かに衣擦れの音が聞こえる。
少し意識してしまう。
意識を別の所へ持っていく努力をしたものの男子として意識せずにはいられなかった。
自分でも情けないと思う。
そんな事を考えてるうちに彼女は試着室から出てきた。
「どうかな?」
出てきた彼女の姿は控えめに言っても綺麗だった。
秋らしい色合いのスカートとセーターが彼女を大人な女性へと変化させていた。
「うん!いいと思う」
そう言うと彼女は嬉しそうに
「これにする!」
と言い、試着室へ戻って行った。
会計を済ませ、次に向かったのは雑貨屋。
彼女は店に入ってすぐのライオンのぬいぐるみを手に取った。
「これめっちゃ可愛い!」
と、彼女がこっちを向いた時だった。
僕のスマホに着信が入った。
父さんからだ。
「あ、ごめん」
僕は電話に出た。
「智!お母さんの容態が急に悪くなった!病院まで来れるか!?」
「...え?」
頭が真っ白になった。
そして気づいた頃には走り出していた。
ちょうど京都駅行きのバスがあったので乗り込んだ。
車内で中井に「ごめん、母さんの病院に行かなくちゃいけないんだ」とメッセージを送った。
そしてバスは京都駅に到着する。
駅につけば病院はすぐそこだ。
病院に着くと母さんの病室まで全力で走った。
そして
「母さん!!」
着いた頃には父さんがベットの側で泣き崩れていた。
そこにいたお医者さんは
「お母さまはお亡くなりになりました。」
と、俯きながら言った。
僕は現実が受け入れられなかった。
「うそ、だろ」
母さんのベットの側まで行き手を握った。
顔は既に青ざめていたが手にはかすかに体温を感じた。
「母さん、母さん!」
いくら声をかけても返事は返ってこなかった。
「母さんにお葬式までにはちゃんとお別れ言ってやれよ」
父さんは優しく僕と母さんを抱きしめてくれた。
「今日はもう家に帰りなさい。父さんはこれからやる事が沢山あるから今日は家に帰るのが遅くなると思う。ごめんな。」
僕は病院を後にし、帰宅した。
スマホを開くと中井からメッセージが届いていた。
「どうしたの?」
僕は母さんが亡くなったとメッセージを送った。
そしてそのままソファで眠りについた。
ピンポーン
インターホンの音で目が覚めたのは夕方の6時頃だった。
「誰だろ」
インターホンの画面に映っていたのは中井だった。
僕は玄関を開けた。
「ご飯作ってあげる」
「いいよ、今日は自分で作るから」
「そんな事言わなーい」
彼女が僕の家に入ると買い物袋を台所に置いて早速料理を始めた。
今日のメニューはカレーだ。
僕も野菜を洗ったり切ったり、手伝いをした。
その時僕はふと思い出した。
「小さい頃母さんとよく一緒にカレー作ってたっけ」
そんな母さんはもういない。
母さんの死が現実味を増してきた。
僕はまた涙を流してしまった。
そんな僕を見た彼女は優しく頭を撫でてくれた。
男として本当に情けない。
カレーが完成したので、食卓に並べた。
「いただきます」
1口カレーを口にした瞬間、母さんの味と同じだと気づいた。
「これ、母さんの味だ」
「気がついた?さっき台所の棚を探してた時に、このレシピ本見つけたんだ」
そう言って彼女が見せてきたのは母さんの手書きのレシピ本だった。
そこにはたくさんのレパートリーの料理のレシピが載っていた。
母さんの料理は僕にとって故郷の味。
忘れられない味。
「このレシピ本、中井にあげる」
「え?けどこれ大切なレシピ本でしょ...」
「大切なレシピ本だからこそ中井に持っていて欲しいんだ」
「...ありがと」
僕は彼女にレシピ本を渡した。
受け取った彼女の頬は赤らんでいた。
カレーを食べ終わり、後片付けをした。
「いつもありがと、あとごめん。今日何も言わず帰っちゃって」
「いいの、事情が事情だし。またもう1回行こ!」
「ありがと」
そして彼女は帰っていった。
僕は風呂に入ってこの日は寝ることにした。
