君に恋した僕の話

中井との出会いが僕の日常を変えた。
彼女は僕が図書室にいる時は毎日欠かさず来てくれた。
その度、面白い本や人気な本の話で盛り上がった。
時には小野寺と3人で本の話をした事もあった。
徐々に僕は中井と打ち解けていく事が出来た。
そんなある日、彼女は突然こんな事を聞いてきた。
「なんで金曜日は図書室にいないの？」
この質問をいつかされる事は正直分かっていた。
平日は毎日図書室に居るのに、金曜日だけ居ないなんて不自然すぎる。
僕には金曜日に図書室へ来れない理由があった。
僕はその理由を中井に話すことにした。
「僕の母さんが今入院しててさ、少し重たい病気なんだよ。だから毎週金曜は母さんのところにお見舞いに行ってる。父さんも仕事が終わったらほぼ毎日母さんのとこで付きっきりで看病してるから帰ってくるのは真夜中か次の日かなんだ。」
「沢田くんはいつも家で1人なの？」
「まぁね」
「ご飯は？」
「たいしたものは作れないけど自分で作ってる」
「じゃあ私が毎日作りに行ってあげる」
彼女は突拍子も無いことを言い出した。
「え、は！？」
「だから毎日ご飯作りにいってあげるって！」
「いや、けど中井だって家帰らないとだめだろ？」
「私一人暮らしなの」
彼女の顔が少しくもった。
「一応二人暮しなんだけどお父さんとお母さんが3年前に離婚してそれからはお母さんが昼も夜も仕事に行ってるから、同じ家に住んでてもほとんど会えてないんだよ」
僕は彼女の家庭事情を知った。
驚きで言葉も出なかった。
「だから！私が毎日ご飯作りに行ってあげるから、一緒に食べよ！」
彼女は重たい空気をかき消すようにそう言った。
彼女は夕食の時いつも1人だった。
自分も夕食の時は1人だから気持ちがよく分かる。
1人の夕食はすごく寂しい。
美味しいものも美味しく感じられなくなるほど。
一緒に夕食を食べる人がいて欲しい。
この気持ちは恐らく彼女も一緒だろう。
「わかった。僕も手伝うから一緒に食べよう」
「うん！」
彼女は元気に答えた。
この日からうちで彼女と夕食をとることになった。
小学校の頃、彼女は同じ学区に引っ越して来たので帰りの下車駅は同じ。
一緒に電車で帰り、うちでご飯を作った。
たまにスーパーで一緒に食材を買ったりもした。
彼女は料理が上手で作れるレパートリーも多かった。
そのため、メニューは毎日違う。
僕はと言うと手伝えることは野菜の皮むきやカット。
それでも役に立てるよう、頑張った。