触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜

言葉に詰まっていると、注文した料理が届いた。



「……とりあえず、食べようか」



店員が行ってしまう前にジョッキを空にし手渡して、同じものをお願いする。

無理やり入れたアルコールが、鉛のように重く溜まっていくのを感じる。



ーーあのとき「寄りを戻したい」と言われて、喜んでしまった。
「触れなくても、この人はまだ私を好きでいてくれた」と安心した。

それと同時に自分の打算的な部分を考えながら、元彼と澪ちゃんをほんの一瞬、天秤にかけてしまった。

最低だと自覚している。

でも何度も同じことで失敗を重ねてきたせいで、今が楽しいからそれでいいなんて到底思えない。



根底にあるのは常に「今回は嫌われないようにしなきゃ」という焦りと、「どうせこの人もすぐ離れていくんだ」という諦めだった。

こんなの、相手に向き合っているとは思えない。私は自分のことしか考えていなかった。



触れない理由を付き合ってきた男の人のせいにして、傲慢だったのかもしれない。

10年近くかかって気づくなんて……。



口数が少ない私を見て、茜ちゃんが心配するように何度も「大丈夫ですか」と尋ねた。

それを酔ったせいにして、さらにジョッキに口をつける。





ーーもうひとつ。
最低なことを思った。

澪ちゃんが男の人だったらよかったのに。
そうしたら、ずっと一緒にいられるのに……。