せっかくやる気を出していたのに、自分の首元が気になってなかなか集中できない。

人と会わずにパソコンに向かう時間の方が多いから、まだマシなんだけど。

今日、絶対SARASAに行ってやる。
文句のひとつでも言わなきゃ気が済まない。

ここにいない澪ちゃんのことを考えていたら、タイピングのスピードも落ちるし打ち間違えもひどい。

残業は覚悟していたけど、こんなに作業が進まないなんて初めてかもしれない。



「……もう!」



19時過ぎ、人の少ないフロアで声を荒らげる。

営業部からは席が離れているし、茜ちゃんもトイレに立っていて不在だから、こんな怖い顔して仕事をしているところは誰にも見られていないはず。



「百瀬、これ出していい?」



領収書の束を持った件の元彼が、茜ちゃんの席に座った。