エンドロールまで見終わって会場の中が明るくなる。

退場する人が出口に押し寄せて混みあった通路を見て、少し待とうと提案した。



「映画、グロかったけど面白かったですね」



座席に座ったまま、澪ちゃんが笑った。

よかった、いつも通りだ。

「面白かったね」と相づちをうつ。

視界に澪ちゃんの手が入って、また心臓がはねる。



ーー違う違う、澪ちゃんは大丈夫。



頭に何度も言い聞かせて平静を装う。




朝みたいに頬を両手で挟まれるような、無意識に触れられるのは大丈夫だったのに。

でもさっきみたいな暗い空間の中で撫でられたりすると、意識がすべて触られている部分に集中しちゃって、早く解放してほしいと思ってしまう。

澪ちゃんが澪ちゃんに見えなかったから?



「ミカさん、お腹すきませんか?」



澪ちゃんに言われて時計を見る。

時間は午後1時を少し過ぎていた。ずいぶん長い映画だったらしい。

時間を意識したら急にお腹がすいてきた。



「すいたね」



「ご飯食べに行きましょ」

「うん、行こう」



通路を見ると、出口に向かう人の数はさっきよりも少なくなっていた。



「行きましょう」



澪ちゃんに手を引かれて立ち上がる。

ほら、やっぱりこういうのは全然、気にならない。