澪ちゃんはきっとまだ起きてこないだろうから、少し時間をかけよう。

冷蔵庫から卵と牛乳とパンを取り出す。

前までは飲み物しか入っていなかったのに、最近は食材と飲み物が半々になった。


卵液を作ってパンを浸したら電子レンジに入れて卵が固まらないように様子を見ながら加熱する。


たっぷりのバターをフライパンで熱して、電子レンジから取り出したパンを焼く。



「なんか美味しそうな匂いするー」



澪ちゃんが起きてきた。



「おはよう、ミカさん」



呼び方がいつものように戻っている。

毎回のことだけど少し寂しくなりながら「おはよう」と返した。



「皿出すね」

「メープルシロップもお願い」

「はーい」



睡眠時間が短いはずなのに、澪ちゃんは寝起きがいい。

お皿とメープルシロップを出したら、お湯を沸かしてコーヒーを湧れてくれた。



出来上がったフレンチトーストとコーヒーをテーブルへ運ぶ。



「ミカさん、今日予定ある?」

「特に。あ、1回家に戻って掃除しに行こうかな、先週行かなかったし。
澪ちゃんは?」

「俺、学校行ってくる。卒論発表会、来週の月曜日だからその会場準備しないと」

「えー、今日、土曜日なのに?」

「そうだよ、めんどくせえ」



メープルシロップを大量にかけながら澪ちゃんが毒づく。
それから思いついたようにこちらを見た。



「明日はちょっと早いかもしれないけど不動産巡りしよう」



お互いの部屋は来年の3月に引き払うことが決まった。

一緒に住む部屋は、お互い通勤しやすいこの辺りで選ぶ予定だ。

引越しの時期がちょうど繁忙期なだけに、早めに動かないと引越し業者の予約が取れなくなるから今から探さなくては。



「そうだね、楽しみ」

「俺もー」



そう遠くない先の話にワクワクする。