映画の内容は、大学のサークル仲間が合宿中に一人ずつ殺されていくというサスペンスだった。

人気の俳優を主要キャストにおいたその作品は、原作ファンから酷評されていたけど、なかなか面白いと思う。


密室の中での殺人。

犯人目線で俳優を追うカメラの動きと俳優の恐怖に歪む顔にハラハラする。



手を膝に置いてスクリーンを見つめていたら、左手をすっと撫でられた。





驚いて隣の澪ちゃんを見ると、平然とした顔で座席の背もたれに寄りかかりながらスクリーンを見つめている。

初めて見る真顔に驚く。

私がいつも見ている澪ちゃんは、ずっと笑顔のままだから、急に知らない人が隣にいるみたいだ。


澪ちゃんの右手だけが意思を持ったようにゆっくりと私の手の甲を撫でたり、指を絡めたりしている。



ぞくりと背中に冷たいものが走る。

触っているのは澪ちゃんで、女の子なら大丈夫だと思っていたのに自分の反応に驚く。

絡む指に意識が集中する。

指の先が冷えていくのがわかる。

時間はそんなに経ってないはずなのに、長く感じる。
映画の内容が頭に入ってこない。


いつもなら振りほどけるのに、相手が澪ちゃんだと解ると簡単に振りほどけない。

目が合った気がした。
急いでスクリーンの方を向くと、澪ちゃんの手が離れた。


ーーびっくりしすぎて心臓が痛い。