「ーーミカさん?」



湯船に浸かりながら考えていたら、浴室のドアを叩かれた。



「はい!?」

「大丈夫? 結構長いから心配になってきた」



浴室の磨りガラス越しに澪ちゃんの影が見える。



「ーーごめん、今あがるね!」



勢いよく立ちすぎたからか、湯船に長時間浸かりすぎたせいか、ぐらりと視界が歪んだ。

バランスを崩して浴槽に膝をつく。
ふちに捕まりながら目眩をやり過ごす。



「ミカさん?」

「……大丈夫、ちょっと立ちくらみ……」

「ごめん、開ける!」



私が返事をする前に浴室のドアが開いた。
恥ずかしがる暇もない。

浴槽のふちに突っ伏していたら、体を引き上げられた。

意識を失っていたほうがよかったかもしれない。






私の体を抱えたせいで、服を着たままシャワーでも浴びたのかというくらい澪ちゃんがずぶ濡れになってしまった。

うまく立てない体にバスタオルを巻きつけられる。



「ちょっとこのままベッドまで運ぶよ」



いわゆるお姫様抱っこで寝室まで移動して、ベッドの上に寝かせられる。

火照って熱を持っているから、シーツが冷たくて気持ちいい。

澪ちゃんがクローゼットから新しいバスタオルを出して、頭の下に敷いてくれた。



「大丈夫?」

「うん、大丈夫……」

「このまま少し休んでて。俺、着替えと水持ってくる」



頭を撫でて、澪ちゃんが寝室を出ていった。
深呼吸を繰り返してようやく落ち着く。