触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜

「……舞ちゃんは入りたがるんですよね。
でも私、銭湯だったら全然いいんですけど、家のお風呂は1人で入りたくて。狭いし」



ふぅ、と茜ちゃんがため息をついた。
5年も付き合っていると、こんな難易度の高い悩みが出てくるのかと焦る。

そういや澪ちゃんも、舞さんの話を聞いて羨ましがっていたような……。



「入ればいいんじゃないの? ダメなの?」



人のことだと軽々しく言えるのに。




「5年間ずっと拒否してきたことをいきなり手のひら返したら、舞ちゃん絶対機嫌悪くするもん」

「えー、難しいね……」

「銭湯行くかなぁ、お風呂上がりに外出るの嫌なんだけどなぁ」



ぶつぶつと折り合いをつけられずにいる茜ちゃんを見て、どっちもどっちな気がしてきた。






「そういや澪ちゃんは元気ですか?」

「あぁ、先週から会ってないや。
今度、卒論発表会みたいなのがあって、発表用に論文を小さくまとめるらしいんだけど、その作業で忙しいみたい」

「ありましたね、そういうの。懐かしいな」

「茜ちゃんと澪ちゃんって同じ大学なんだもんね」

「学科は違ってましたけどね。
舞ちゃんが澪ちゃんと同じ学科だから、舞ちゃんの卒論手伝ってましたよ私」

「へえ」

「1週間、丸々会ってないの初めてじゃないですか?」

「そうかも。でもお店に行けば会えるし」



ーーそう、お店に行けば会えるのに、あの日から一度も行っていない。


暗がりとはいえ澪ちゃんの体を見てから、澪ちゃんがどんなにメイクをしようが胸を盛ろうが、男の人に見えてしまって今までのように接することができなくなってしまった。

男の人だと聞かされたときはすぐに順応できたのに、実際に見てしまうと意識してうまく話せなくなる。

話せないのに、悩みは別なところで大きくなっていた。