大量にあったカツカレーを半分以上食べたところで、澪ちゃんの頭が皿にくっつくほど近づいた。
背中に男の人が乗っかっている……。



「澪だー、なにお前またカレーなの? あ。今日水曜日か」

「重い」



よく見たら智哉さんだった。会うのは澪ちゃんが男だと知った日以来だ。



「おわ、ミカさん!」



目が合って驚かれる。



「……こんにちは」

「澪、振られなかったの? よかったねぇ」

「いや離れろよ、食いづれえ」


自分の頭にしがみつく智哉さんを片手で引きはがす。このテンションにはどうにも慣れない……。

智哉さんが後ろから来た友人らしい団体に名前を呼ばれている。



「呼ばれてんじゃん」

「あーそうね、行かなきゃ。じゃあね、ミカさん」

「あ、はい」



嵐のように去っていく智哉さんを見送る。

その後、澪ちゃんの言う通り学生が集まる時間帯のせいか、会う人会う人に「澪の彼女」だと驚かれた。
……紹介されるのはとても嬉しいんだけど、



「……なんかもう、緊張しすぎてお腹いっぱいになってきた。澪ちゃん友達多いね」

「ごめん、ゆっくり食べれないよね。残すなら俺食べるから無理しないでね」



すでに食べ終えている澪ちゃんがテーブルに腕を置いて申し訳なさそうに笑った。