触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜

お腹に小さな圧迫感の後、体を引っ張られてバランスを崩す。後ろに立つ人にぶつかった。



「この前はどうも。早坂さん?」



大好きな匂いがした。
安心して泣きそうになる。



「なんだよ、……アンタなんであんな格好」



睨んでいた早坂の目に一瞬動揺が走る。
声と目の前の澪ちゃんの格好で気づいたようだ。

澪ちゃんは私の後ろで冷たく笑った。



「さあ? ただの仕事上の制服だと思ってれば? いちいち言うのめんどくさいし、さっさと連れて帰りたいし。

とりあえず、その手離せ」



凄む澪ちゃんに圧倒されたのか、一瞬の間を置いて、早坂の手が離れる。



「意味わかんねえ……気持ち悪……」



それから目を伏せたまま呟いて、去って行った。

修羅場の終わりに、周りの目が散り散りになっていった。



「……澪ちゃん」

「迎えに来たよ、帰ろっか」



優しい目をして澪ちゃんが笑った。
お腹にあった手が、私の手を握る。
我慢していた涙が溢れ出した。