触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜

ひたすらパソコンに向かって書類を作る。

育休中の社員の書類手続きや、育児との兼ね合いで時短勤務になる社員の保険手続きをやっていると、少し前までこういった類の書類を見る度、自分には到底経験できそうもないだと思っていた。

漠然と結婚願望だけが強いのに、触っても大丈夫な相手がいなかったから。



付き合って最初の頃、駅のホームで澪ちゃんと話した内容を思い出す。

あのとき、結婚もしたいし子どももほしいと言った私の話を、澪ちゃんはどういう気持ちで聞いたたんだろう……。


ーーダメだ、思い出したらなんか恥ずかしくなってきた……。



そのとき机の上に出しっぱなしにしていたスマホが数秒震えた。


『今日、仕事終わる頃に迎えに行くね』


タイムリーに澪ちゃんからのメッセージ。



「あーダメだ……」

「どうしたんですか?」

「……ごめん、一人言」



パソコンのキーボードを奥へ押して、机の上に突っ伏した。
顔のにやにやが止まらない。