結局その後、入ってきた常連客らしい人に助けられた。

澪ちゃんはその人と接客用の物腰柔らかな表情で話をしている。

カウンターの隅に移動してカクテルを少しずつ飲む。


さっきから、なにを頼むか聞かれないまま、グラスが空になる度に新しいカクテルが自動で届く。

ーーまだ怒ってるよ……。



今まで、「大きなケンカ=振られる」経験しかしてこなかったから、どうやったら許してもらえるのかわからない。

謝っても許してもらえない場合はどうすればいいの?



スマホの検索画面を開く。
「ケンカ 仲直りの仕方」を入力。
出てきた検索結果を見ながら愕然する。


ーーなんだよ、ボディタッチって!

男の人ってこんなに単純なの!?

意味ないじゃん! 向こうの方が私より立派なもの持ってますけど!


25歳になって仲直りの方法を調べているのもどうかしていると思ったけど、世の中の男の人の単純さに呆れる。

私にはできなかったことだけど。



スマホを閉じてからトイレへ立つ。

飲みすぎたのか、足下がぐらつく。

小さいグラスばかりだからそんなに量は飲んでないはずだけど。
あぁでも小さいグラスの方がアルコール度数って高いんだっけ。

このまま酔ったフリをしたら、澪ちゃんは優しくしてくれるかな……。


どうすることもできなくて、そんな美人局のようなことを考えてしまう。