触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜

「ここ知ってたんだね」



どういうところに勤めているかは言ったけど、店の名前までは言っていなかったはずだ。

なんとなく気まずくて、席をひとつずらして座る。



「澪ちゃんに教えてもらったんですよ」


ーー「澪ちゃん」……?

この前まではそんな呼び方じゃなかった。

驚いて茜ちゃんと澪ちゃんを交互に見る。
茜ちゃんの話を聞いていないのか、カウンターの中で俯いてなにか作業をしている。

ーーあ、目が合った。



「ミカさん、何か飲みますか?」

「あ、うん、メニュー見てから……」



澪ちゃんと茜ちゃんの会話が気になって、メニューの文字が頭に入ってこない。



「ミカさん、今日、映画館の前にいませんでした?」

「え……」

「ここに来る前ちらっと見た気がして。
ね、澪ちゃん」

「……そうですね」



澪ちゃんを見る。
さっきから、視線が合わない。

澪ちゃんも見ていたというのはどういうことだろう。

2人はさっきまで一緒だった……?

茜ちゃんの足元を見る。
さっきまで私が隠れていた、ショッピングモールの中にあるファッションブランドの袋が、スツールに立てかけられていた。



「なんで早坂さんと一緒にいたんですか? 寄り戻しました?」