触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜

店を出る頃には、傾きかけていた日がすっかり沈んで、ショッピングモールや映画館の光が眩しかった。
一緒にいたのは1時間ほどだったのに、1日中過ごしたみたいだ。

目線のずっと先にある映画館前の宣伝用スクリーンに、公開中の映画の予告編が流れ続けている。



「そういやこの前は結局観れなかったんだよな」



同じところを見ながら、早坂が申し訳なさそうに呟いた。吸い寄せられるように、足が自然に映画館の前に向かう。



「私が振られたからね。
公衆の面前でこっぴどく」

「いや、あのとき仕事忙しくてイライラしてたからかも……。
帰ってから後悔したんだよ。今もしてるんだけど。
時間あるなら今観るか?」

「もう観た」



予告編に映る俳優を見て、あぁ、あの人は殺されたんだよなぁと思い出す。

「面白かった」と付け足すと、早坂が驚いたような顔になった。それから苦笑いで言った。



「……あー、なんか、うん、わかった」



髪を掻きながら1人で納得している。



「お前、たぶん最初から俺のこと好きじゃなかったんだな。
好きだとしても、友達としてみたいなさ、俺の好きとはちょっと種類が違ってて。

好きになろうとしてくれてたんだろうけど、無理させたかもな。だから上手くいかなかったんだと思う」



図星をつかれた気がした。
早坂と別れたとき、親友と絶交したような、転校かなんかで突然いなくなったような気分と似ていた。

好きの種類が違う。
その表現がぴったりと当てはまる。