「いつでもここにいるからさ、

また来るといいよ」

「ありがとう」

神社を出て手を振りそれぞれ反対方向に歩く。

しばらく進んだところで彼女の学年も名前も、

何一つ聞いていなかったことに気づいた。

そして、自分も何一つ名乗っていない。

小さくてボロボロのアパートに着くと

鍵を開けて中に入って、ただいまと声をかける。

もちろん返事はない。

母親は午後7時頃から仕事に出かける。

家に帰るのは毎朝6時。

いわゆる、夜の仕事だ。