『そうなんだ。楽しみだなぁ。でも、大学に行くなんて何年ぶりだろ。ちょっとドキドキしちゃうな』


『結菜さんなら…全然、大学生でも通用しますよ』


『いやだ!そんなわけないじゃない。私、もう大学卒業してずいぶん経つんだから』


『本当に…お世辞じゃないです。結菜さんなら医学部の生徒に混じってても全然おかしくないです。一緒に授業受けてみますか?』


文都君がニッコリ微笑んだ。


『ダメダメそんなの。あ、じゃあ着替えてくるね。ちょっと待っててね』


い、今のやり取りは、私が若く見えるってこと?


学生だなんて絶対嘘だよね、からかわれてるだけだよね?


私は…もう30歳なんだから。


だけど、文都君の不意打ちに、恥ずかしながらも少し喜んでしまった。


急いで着替えを済ませ、冷静を装って下に降りていくと、文都君が笑顔で迎えてくれた。


『行きましょうか』


一緒に外に出て、バスに乗って、電車にも乗って…


こんな風に2人きりでお出かけするのは初めてだった。


文都君が通うのは、そう遠くないところにある都内でも指折りの有名大学だ。


構内に入ってみると、そのあまりにも広大な敷地の中にそびえ立つ、塔のような立派な建物に驚いた。