ううん…違う、私、わざと逃げずにいるの?


『…俺のこと、嫌い?』


『えっ…』


『答えられないよね。結姉は、健太さんの奥さんだし、俺はただの同居人だから…』


『ちょっと颯君、本当にどうしちゃたの?おかしいよ』


『答えて』


『…そんなこと…ごめん、私、なんて言えばいいのかわからない』


颯君のことをただの同居人だと思っていたなら、きっと、この腕を無理やりほどこうとしたはず。


でも、私はそうしなかった。


もしかして颯君を好きになったの?


ごめん、本当に…わからない。


胸がこんなに熱くてドキドキしてるのに…


なのに、どんな言葉で表せばいいのか、何一つわからない。


『ごめんね。もう離して…くれるかな…』


その言葉で、ようやく颯君はそっと私から離れた。


『きょ、今日のモデルはこれで終わり。さあ、夕食の準備しないと』


私は急いで颯君の部屋を出て、そのドアを閉めた。


息が苦しい。


この胸の高鳴り、このまま死んでしまうんじゃないかと思う程だ。


私…


颯君と祥太君に抱きしめられたんだよね?


これって、本当に夢じゃなくて現実なの?


もしかして、私、みんなにからかわれてるの?


もう…頭の整理ができない。


冷静にならなきゃ…しっかりしないといけないのに。


とにかく、今日のことは一旦忘れよう。


私は、何も無かったかのように、2人とのことを無理矢理胸の奥にしまいこんだ。