『だとしたら…健太さんは女性を見る目が全くない。結姉は肌だってすごく綺麗だよ。お世辞じゃない。健太さんは馬鹿だよ。こんなすぐ近くに結姉みたいな…ごめん、俺、部屋に戻る』


『えっ、ちょっと、どうしたの?』


振り返らずにキッチンを出ていった颯君。


何だか少しつらそうな顔をしてたのに、ただ背中を見つめるだけで、声掛けもできずにごめんね。


本当に…母親役の難しさを痛感する。


それにしても、私に対する旦那の言葉にはどんどんトゲが増えていく。


触ると怪我をしてしまいそうな鋭いトゲが。


年齢を重ねることって、女性にとってはやっぱり複雑。


悪いことばかりじゃないけど、でも…


若い時とは圧倒的に違う何かを抱えてしまってる。


私は1人でダイニングのイスに座り、それ以上は何も考えられずにいた。


サンドイッチもコーヒーもまだ残ったままで…


ただ静けさの中、刻刻と時間だけが過ぎていった。