『えっ』


考えごとしてたから、いきなり飛び込んできたクールな見た目の祥太君の笑顔にドキっとした。


その瞬間、つい今まで頭の中に浮かんでいた川崎君のことは、跡形もなく私の意識から消え去った。


『あっ、うん、今日はカレーにしようかなと思ってるけど、何カレーがいいかな?』


『結菜ちゃんのカレー楽しみだな。何カレーでもいいよ、結菜ちゃんが作ってくれるなら』


相変わらず勘違いさせるようなセリフを平気で言ってくる。


どうせみんなに言ってるんだろうから、絶対、調子に乗っちゃダメだってわかってる。


だけど…


そんな優しい言葉が、今の自分のやる気に繋がってるのも確かだった。


『カレーのために今日も楽団の練習頑張ってくるね。1ヶ月後のコンサート。絶対に…結菜ちゃんも見にきて』


そう、祥太君は、東京中の大ホールでコンサートを開催する有名楽団のメンバー。


入場料も結構高くて人気も実力もあるから、なかなかチケットが取れない。