『だいたい、今さら何で同居人なんか?』


ふてくされた顔をする彼。


『それがパパの残した遺言だから』


『遺言だからって、そんなのいちいち守る必要ないだろ?』


化粧を直していると、そう言いながら背中に顔をくっつけてきた。


そんな行動が、やっぱりうっとおしく思える。


嫌いなわけじゃないのに…


『じゃあ、帰るね。また連絡するから』


『…帰したくない』


引き止める彼をなだめて、私はこの部屋から脱出した。


彼の名前は、川崎誠(かわさき まこと)。


現在、30歳。


高校の時の同級生で、その頃にはお付き合いはなかったけど、1年前に偶然再会して。


気がつけばこういう関係になってた。


川崎君は、爽やかなサッカー少年でとても人気があった。


私も…少し憧れてた。


でも、今は…


何だかくたびれたおじさんみたいで、あの頃の面影は…残念ながらかなり薄れていた。