『うん。祥太君のピアノ、本当に素晴らしいから、いつかお父様にも聞いてもらえたらいいね』


祥太君の笑顔、とっても優しい。


『ありがとう。俺、結菜ちゃんには健太さんがいるって…ちゃんとわかってる。だから、今は片思いでも仕方ないって思ってるよ。でも、俺の気持ちは伝えたかったんだ。勝手でごめん…』


『祥太君、ごめんね…ありがとう』


何とも言えない気持ちが湧き上がってくる。


『…でもさ、いつかは…っていう期待は持ってるから。俺、あきらめないよ。結菜ちゃんのこと』


『祥太君…』


祥太君は、うなづきながら、私の頭にポンっと触れた。


そして、また、微笑みながら歩き出した。


『ずるくてごめんね』


祥太君がポツリと言った時、もう雨は…あがっていた。


次の日、祥太君はお父さんと向き合って、勇気を出して気持ちを伝えた。


お父さんの答えはまだまだ厳しいものだったけど、祥太君の気持ち…ピアノへの情熱を否定はしなかったって。


前はピアノを止めろって言われてたらしいから、すごい進歩だと思う。